映画や舞台、テーマパークなどで目にする、まるで本物のような古びたレンガや錆びた鉄、時代を感じさせる木材。これらは、塗装によって意図的に生み出された「景色」です。
このような、空間やモノに特定の時代設定やストーリー性を与える塗装技術を「美術塗装」と呼びます。
この記事では、単に色を塗るだけではない、アーティスティックな表現を可能にする美術塗装の代表的な手法と、その魅力について分かりやすく解説します。
美術塗装とは、塗装対象が持つ本来の質感や色合いとは別に、擬似的に異なる素材感や経年変化などを表現する塗装の総称です。その目的は、見る人を作品の世界観に引き込むための「雰囲気作り」にあります。
新品の素材を、まるで何十年も前からそこにあったかのように見せたり、コンクリートを重厚な岩肌に見せたりと、職人の技術一つでさまざまな「だまし絵」のような効果を生み出します。
店舗の内装やアミューズメント施設の造形物、映像作品のセットなど、特定のテーマやコンセプトが求められる空間において、リアリティと没入感を高めるために不可欠な技術となっています。
新しい素材に、あえてサビや汚れ、塗装の剥がれ、色あせといった経年変化の表情を加える手法です。鉄が錆びて赤茶色になった質感(錆塗装)や、銅に発生する緑色の錆(緑青塗装)、長年使い込まれた木材のかすれた風合いなどを塗料の組み合わせと塗り方で再現します。
耐久性のある新しい素材を使いながら、アンティークやヴィンテージの持つ独特の温かみや重厚感を安全に演出できるのが大きな特徴です。店舗の看板や内外装、家具や什器など、趣のある雰囲気を創り出したい場合に用いられます。
塗装によって、対象物とは全く異なる素材の質感を再現する手法です。「フォーフィニッシュ」とも呼ばれます。例えば、コンクリートの壁に大理石の持つ高級な石目を描いたり、金属の扉に温かみのある木目を描いたりすることが可能です。
コストや重量の問題で本物の素材を使用できない場合でも、塗装によってデザインの幅を大きく広げることができます。壁面だけでなく、柱や家具など、空間のアクセントとしてさまざまな場所で活用されます。
造形物の凹凸に合わせて影(シャドウ)を描き入れることで、陰影を強調し、より立体感や奥行きを際立たせる手法です。テーマパークの擬岩や擬木など、モルタルで作られた造形物に施すことで、光の当たり方を計算したような自然な陰影が生まれ、リアリティが格段に向上します。
また、壁面に直接イラストや風景を描く壁画も美術塗装の一つです。空間全体を一つのキャンバスとして使い、非日常的な世界観やブランドイメージをダイレクトに表現することができます。
どのような空間・雰囲気にしたいのか、具体的なイメージを写真やイラストで共有することが重要です。
「何年くらい経った感じか」「どの地域の、どんな建物を参考にしているか」といった、背景にあるストーリーまで伝えることで、塗装会社とのイメージのずれを減らし、より精度の高い表現が可能になります。
美術塗装を施す対象の素材(モルタル、木、金属など)や下地の状態によって、使用する塗料や施工方法が変わります。
また、屋内か屋外か、人の手が触れやすい場所かといった設置環境は、求められる塗料の耐久性や安全性に影響します。これらの情報を事前に伝えることで、より適切な工法の選定につながります。
美術塗装は、職人の手作業による部分が大きく、仕上がりが一点一点異なります。そのため、本施工に入る前に、実際の素材に塗装のサンプルを作成してもらうことを推奨します。
小さな板などで行う「サンプルピース」や、現場の一部で試す「見本施工」で、色味や質感を自分の目で確認し、納得した上で全体の作業を進めることが、後悔のない仕上がりにつながります。
美術塗装は、単なる塗装技術ではなく、空間に物語と感動を生み出すアート表現の一種です。その表現力は、商業施設や個人の住宅に至るまで、さまざまな場所で人々の心を惹きつける力を持っています。
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そういった事態を避けるために、製品に適した塗装技術と設備を持つ会社選びが重要です。
繊細なデザインと塗料の密着性が難しいチタン素材が特徴の鯖江眼鏡※1において実績がある。そこで培われた技術で複雑な形状の小物でも360度ムラ・異物混入なく仕上げる。
他社ではなかなか対応が難しい最大10mの塗装にも対応※2できる設備を備えているため、建材や施設のエントランス、大型家具などにも多彩なカラーや模様塗装が可能。
高膜厚粉体塗料を使用した塗装設備を保有しており、1回の塗装で一般的な塗装のおよそ4~5倍の厚さを形成できるため、キズや摩耗に負けない耐久性の高い塗装が得意。
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※2「焼付塗装 メーカー」「金属塗装 メーカー」と検索(chrome)し表示される18社すべてのうち唯一10mの製品に対応できる企業(2024年9月25日時点。編集チーム調べ)