「このメッキは品質が良い」とは、一体どういう状態を指すのでしょうか。単に見た目がピカピカである、ということだけではありません。工業製品におけるメッキの品質とは、その製品が設計通りに機能し、期待される寿命を全うするための、客観的な性能指標によって定義されます。
この記事では、メッキの品質を判断する上で欠かせない、製品の信頼性を保証するための、客観的な評価基準について分かりやすく解説します。
メッキの品質は、単一の要素ではなく、複数の評価基準を総合的に満たすことで保証されます。ここでは、特に重要な5つの基準について見ていきましょう。
最も基本的で、直感的に分かりやすいのが外観の品質です。これは、メッキ表面に実用上、また美観上、有害な欠陥がないかを目視や顕微鏡で検査します。具体的には、光沢の度合い、色調の均一性、そして「ピット(微小な穴)」「膨れ」「シミ」「傷」「クラック(ひび割れ)」といった欠陥の有無が厳しくチェックされます。
メッキ皮膜の厚さ(膜厚)は、耐食性や耐摩耗性、導電性といったメッキの性能に直接影響する、極めて重要な管理項目です。膜厚が規定より薄ければ、期待された耐久性を発揮できません。逆に厚すぎると、部品の寸法公差を外れてしまったり、皮膜の内部応力が高まって剥がれの原因になったりします。蛍光X線分析装置などの専門的な測定器を用いて、ミクロン単位で正確に測定・管理されます。
メッキ皮膜が、母材(メッキされる製品)から剥がれないように、いかに強く付着しているかを示すのが密着性です。これは、メッキの品質における最も基本的な要求事項と言えます。メッキ皮膜が母材から剥がれないように、しっかりと付着しているかを評価するため、様々な試験が行われます。
メッキ皮膜の硬さは、主に耐摩耗性や耐傷性の指標となります。コネクタの抜き差しや、機械の摺動部品など、物理的な摩擦が想定される製品では、特に重要な品質項目です。マイクロビッカース硬度計といった専用の試験機を使い、皮膜の表面に圧子を押し込み、そのくぼみの大きさから硬さを測定します。無電解ニッケルメッキなどは、熱処理を加えることで、この硬さをさらに高めることが可能です。
金属製品を錆から守る「防食」を目的としたメッキでは、耐食性が最も重要な性能です。この評価には、塩水噴霧試験(SST)が広く用いられます。これは、製品を塩水を連続的に噴霧する試験槽に入れ、規定の時間内に錆(白錆や赤錆)が発生しないかを確認する、非常に過酷な加速試験です。この試験に合格することで、厳しい環境下でも製品を長期間にわたって保護できることが証明されます。
これまで紹介した5つの基準は、あくまで完成した製品の品質を「検証」するためのものです。しかし、真の高品質なメッキは、最終検査で見つけられるものではなく、前処理から後処理まで、すべての処理工程を精密に管理することによってはじめて作り込まれます。
特に、メッキ不良の9割の原因とも言われる「前処理(脱脂や酸洗)」の徹底と、メッキ液の濃度や温度、不純物などを常に最適な状態に保つ「浴管理」こそが、安定した高品質なメッキを生み出す心臓部なのです。
メッキの品質は、「外観」「膜厚」「密着性」「硬さ」「耐食性」といった多角的な視点から評価されます。製品を発注する際には、これらのうちどの特性を特に重視するのか、要求される品質仕様を明確に定義し、メッキ業者と共有することが、期待通りの製品を得るための鍵となります。
製品に関する専門知識や技術が不足すると、色ムラや塗装剥がれが発生し、品質低下やコスト増、納期遅れを招きます。
そういった事態を避けるために、製品に適した塗装技術と設備を持つ会社選びが重要です。
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