スマートフォンやパソコン、医療機器、自動車など、私たちの生活に欠かせないハイテク製品。その内部で使われる小さな部品には、製品の性能を左右する極めて薄く、均一な機能性コーティングが施されています。これを実現するのが「精密塗装」です。
この記事では、目には見えないレベルで高精度なものづくりを支える、精密塗装の役割と、その世界について解説します。
精密塗装とは、部品や製品に対して、特定の機能を持たせることを目的に、数ミクロンから数十ミクロンという極めて薄い塗膜を、高い精度で均一に形成する塗装技術です。
見た目の美しさではなく、塗膜が持つ「機能」そのものが価値となるのが大きな特徴です。塗膜の厚さ(膜厚)や均一性、塗布する位置の正確性が、部品の性能に直接影響するため、高度な塗装技術とクリーンな作業環境、厳格な品質管理が求められます。
電子基板やコネクタ、センサーといった微細な部品に、電気を通さないための「絶縁性」や、逆に電気を特定の部分にだけ通すための「導電性」、静電気を防ぐ「帯電防止」といった機能を持つ塗膜を形成します。
湿気やホコリからデリケートな電子回路を保護する防湿・防塵コーティングも、製品の信頼性を保つために不可欠な精密塗装の一つです。
カテーテルやガイドワイヤの表面に、体内でスムーズに操作できるよう「潤滑性(滑りやすさ)」を高めるコーティングが施されます。また、体内に入れた際にアレルギー反応などを起こしにくくする「生体適合性」を持つ塗料も使用されます。
衛生性が求められる医療器具や検査装置の部品に、菌の増殖を抑える「抗菌性」を付与する場合もあります。
カメラのレンズやディスプレイの表面に、光の反射を抑えて透過率を上げる「反射防止(AR)コーティング」が施されます。これにより、クリアな視界や映像を実現します。
表面の傷つきを防ぐための「ハードコート」や、指紋の付着を抑える「防汚コート」も、製品の品質と使いやすさを維持するために活用される精密塗装技術です。
「絶縁性が欲しい」というだけでなく、「どのくらいの電気抵抗値が必要か」といった具体的な性能値を明確にすることが重要です。
使用される環境(温度、湿度、薬品の有無など)を伝えることで、その環境に適した耐久性を持つ塗料や工法の選定につながります。
塗装する部品の素材(金属、樹脂など)や、形状の複雑さ(凹凸、微細な穴など)は、工法を選定する上で基本的な情報です。
特に、部品の特定の部分にだけ塗装し、他の部分には付着させてはならない「マスキング」の要否と、その精度は、見積もりや納期に大きく影響する要素となります。
ミクロン単位の膜厚を正確に管理できる測定器があるか、塗膜に異物やピンホール(微小な穴)がないかを検査する体制が整っているか、といった点は、仕上がりの品質を担保する上で大切な確認項目です。
どのような検査基準で良否を判断するのかを、事前にすり合わせておくことも、後々のトラブルを防ぐために役立ちます。
精密塗装は、日本のものづくりにおける「縁の下の力持ち」とも言える技術です。個々の部品に特殊な機能を与えることで、最終製品の性能や信頼性を大きく向上させています。
その実現には、塗料に関する化学的な知識から、微細な部分に均一に塗布するための物理的な技術まで、幅広い専門性が求められます。
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製品に関する専門知識や技術が不足すると、色ムラや塗装剥がれが発生し、品質低下やコスト増、納期遅れを招きます。
そういった事態を避けるために、製品に適した塗装技術と設備を持つ会社選びが重要です。
繊細なデザインと塗料の密着性が難しいチタン素材が特徴の鯖江眼鏡※1において実績がある。そこで培われた技術で複雑な形状の小物でも360度ムラ・異物混入なく仕上げる。
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