「メッキパーツの色を変えたい」「銀メッキの変色を防ぎたい」と考えたとき、多くの人が疑問に思うのが「メッキの上に、さらに塗装(上塗り)はできるのか?」ということでしょう。
結論から言うと、適切な下地処理と塗料を選べば、メッキの上からの塗装は可能です。この記事では、メッキに上塗りをする目的から、塗装を成功させるための重要なポイント、そして代表的な手法までを分かりやすく解説します。
なぜ、わざわざ金属の膜であるメッキの上に、さらに塗装を施すのでしょうか。その目的は、主に「保護」と「意匠性の向上」の2つです。
銀や銅、真鍮といった金属は、それ自体が美しい輝きを持っていますが、空気中の成分と反応して時間と共に変色しやすいという弱点があります。そこで、これらのメッキの表面に透明な塗料(クリアコート)を上塗りすることで、空気との接触を断ち、変色や錆の発生を防ぎます。これにより、メッキ本来の美しさを長期間にわたって維持することができます。
クロムメッキのような金属光沢を活かしつつ、色味を加えたい場合に上塗りが用いられます。色のついた透明な塗料(カラークリアー)を上塗りすることで、メッキの輝きとカラーが融合した、独特の質感(キャンディーカラーなど)を生み出すことが可能です。自動車やバイクのカスタムパーツ、釣具のルアーなどで、既製品にはないオリジナリティを表現する手法として人気があります。
メッキへの上塗りは可能ですが、一般的な塗装に比べて難易度が高いとされています。その最大の理由は、メッキ表面が非常に滑らかで、塗料が食いつきにくい(密着しにくい)ためです。
通常の塗装は、素材表面の微細な凹凸に塗料が入り込むことで、アンカーのようにがっちりと密着します。しかし、クロムメッキのようにツルツルで緻密な表面には、この凹凸がほとんどありません。そのため、下準備なしに塗装すると、塗料が弾かれたり、乾燥後に爪で引っ掻いただけで簡単に剥がれてしまったりするのです。
メッキへの塗装を成功させ、簡単に剥がれない強固な塗膜を作るためには、丁寧な下準備が不可欠です。
メッキ表面に、人間の皮脂や油分、ワックスなどがわずかでも残っていると、塗料の密着を著しく妨げます。シリコンオフなどの脱脂剤を使って、塗装面の油分を完全に除去することが、最初の重要なステップです。
塗料の食いつきを良くするために、塗装面の光沢がなくなるまで、研磨剤(コンパウンド)や目の細かい耐水ペーパー(1000番以上)で軽く研磨します。この表面をわずかに荒らす「足付け」作業により、塗料が引っかかる微細な凹凸を作り出します。
最も重要なのが、メッキのような非鉄金属と、上塗り塗料との密着性を高めるための、専用のプライマー(接着剤のような役割の下塗り塗料)を使用することです。「非鉄金属用プライマー」や「ミッチャクロン」といった製品を最初に塗布することで、上塗り塗料が剥がれにくくなります。
メッキへの上塗りは、その滑らかな表面特性から、通常の塗装よりも丁寧な下準備が求められる、難易度の高い作業です。しかし、「脱脂」「足付け」「プライマー」という3つの基本ステップを確実に行うことで、個人でもメッキ製品の色の変更や保護が可能になります。
メッキの保護から、オリジナリティあふれるカスタムカラーの実現まで、上塗りはメッキの可能性をさらに広げる技術と言えるでしょう。
製品に関する専門知識や技術が不足すると、色ムラや塗装剥がれが発生し、品質低下やコスト増、納期遅れを招きます。
そういった事態を避けるために、製品に適した塗装技術と設備を持つ会社選びが重要です。
繊細なデザインと塗料の密着性が難しいチタン素材が特徴の鯖江眼鏡※1において実績がある。そこで培われた技術で複雑な形状の小物でも360度ムラ・異物混入なく仕上げる。
他社ではなかなか対応が難しい最大10mの塗装にも対応※2できる設備を備えているため、建材や施設のエントランス、大型家具などにも多彩なカラーや模様塗装が可能。
高膜厚粉体塗料を使用した塗装設備を保有しており、1回の塗装で一般的な塗装のおよそ4~5倍の厚さを形成できるため、キズや摩耗に負けない耐久性の高い塗装が得意。
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