スマートフォンやパソコン、コネクタ、半導体など、現代のあらゆる電子機器は、電気が正確に流れることで初めて機能します。この電気の流れを確実なものにするために、目立たないながらも極めて重要な役割を果たしているのが「導電性メッキ」です。
導電性メッキとは、電気を通しにくい素材の表面に電気を通しやすい金属の膜を形成したり、元々電気を通す金属の表面特性をさらに向上させたりする技術です。この記事では、電子機器の信頼性を根幹から支える導電性メッキについて、その役割から代表的な種類までを詳しく解説します。
導電性メッキは、単に「電気を通す」というだけでなく、電子部品において多様な役割を担っています。
プラスチックやセラミックといった、本来は電気を通さない「絶縁体」の表面にメッキを施すことで、電気回路としての機能を持たせることができます。これにより、製品の軽量化や形状の自由度向上に大きく貢献します。例えば、スマートフォンの筐体にアンテナ機能を持たせる技術(LDS:Laser Direct Structuring)などがこれにあたります。
コネクタの接点のように、部品同士が接触して電気を伝える部分では、その接触面の抵抗値(接触抵抗)が低いほど、効率的に電気を流すことができます。金や銀のような非常に電気抵抗が低い金属でメッキを施すことで、接触抵抗を安定して低く保ち、接続の信頼性を高めます。これにより、信号の損失を防ぎ、電子機器の安定した動作を保証します。
電子部品を基板に実装する際には、「はんだ」が使われます。銅の回路パターンなどは、そのままだと表面が酸化してしまい、はんだがうまく濡れ広がりません(はんだ付け性が悪い)。そこで、スズや金などのメッキを施すことで、表面の酸化を防ぎ、はんだ付けがスムーズかつ確実に行えるようにします。これは、製品の量産性や品質に直結する重要な役割です。
用途やコスト、求められる性能に応じて、様々な種類の金属が導電性メッキに用いられます。
金は、化学的に非常に安定しており、錆びたり変色したりすることがほとんどありません。この耐食性の高さにより、長期間にわたって安定した低い接触抵抗を維持できるため、最も信頼性の高い導電性メッキとして知られています。CPUの端子や高品質なコネクタなど、絶対に接続不良が許されない、電子機器の心臓部で使われます。非常に高価なため、必要な部分にだけ薄く施されるのが一般的です。
スズメッキは、比較的安価でありながら、良好な導電性と優れたはんだ付け性を兼ね備えています。そのため、電子部品のリード端子やプリント基板の表面処理など、非常に幅広い用途で利用されています。時間経過と共に「ウィスカー」と呼ばれるヒゲ状の金属結晶が成長し、ショートの原因となる可能性があるため、その対策としてリフロー処理(一度溶融させる)や、鉛などを加えたはんだメッキが用いられることもあります。
銀は、すべての金属の中で最も高い導電率を持つ、電気を通す能力に最も優れた素材です。そのため、大電流を扱うスイッチの接点や、高周波信号が流れる通信機器の部品など、特に低い電気抵抗が求められる箇所で活躍します。ただし、空気中の硫黄分と反応して黒く変色(硫化)しやすいという弱点があるため、使用環境や変色防止の対策が重要になります。
銅メッキは、それ自体も良好な導電性を持ちますが、多くの場合、他のメッキ(金やスズなど)を施すための「下地メッキ」として重要な役割を果たします。素材と上層メッキとの密着性を高めたり、素材に含まれる成分が上層に拡散して性能を劣化させるのを防ぐ「バリア層」として機能したりします。プラスチックのような非導電性素材にメッキを施す際の、最初の導電層としても不可欠です。
導電性メッキを選ぶ際は、まずその部品に「どのような電気的特性が求められるか」を明確にする必要があります。低周波か高周波か、微小電流か大電流か、コネクタのように抜き差しされるか、はんだ付けされるか、といった使用条件によって、最適なメッキは異なります。
また、製品が置かれる環境(温度、湿度、腐食性ガスの有無など)も、メッキの耐久性や信頼性に大きく影響します。コストと、求められる性能・信頼性のバランスを総合的に判断し、最適なメッキの種類と膜厚を選定することが、電子機器の品質を左右する重要な鍵となります。
導電性メッキは、電子機器の小型化、高性能化、そして高信頼化を実現するために、決して欠かすことのできない基盤技術です。金、銀、スズ、銅といったそれぞれの金属が持つ特性を最大限に活かし、適材適所で使い分けることで、現代のデジタル社会は成り立っています。
目に見えない薄い膜が、私たちの生活をより豊かで便利なものにしているのです。
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