「電気を使って皮膜を形成する」という点で、しばしば混同されがちな「電着塗装」と「メッキ(電気メッキ)」。どちらも自動車部品をはじめとする工業製品に広く用いられる、極めて重要な表面処理技術です。
しかし、その目的や形成される皮膜の性質は全く異なります。この記事では、似ているようで全く違う、電着塗装とメッキの違いについて、それぞれの原理から特徴、用途までを分かりやすく比較解説します。
両者の最も根本的な違いは、製品の表面に形成する皮膜の素材です。
つまり、「電気を使って塗料の膜を作るのが電着塗装」、「電気を使って金属の膜を作るのがメッキ」と覚えるのが基本です。
どちらも電気の力を利用しますが、その作用のさせ方には違いがあります。
水系の塗料が入った浴槽に製品(被塗物)を浸し、これを陽極(+)、浴槽内の電極を陰極(-)として電気を流します。すると、マイナスに帯電した塗料の粒子が、プラスの製品側に引き寄せられて付着し、塗膜を形成します。(※これはアニオン電着の場合で、製品を陰極にするカチオン電着が主流です)
金属イオンを含んだ溶液に製品(被メッキ物)を浸し、これを陰極(-)、皮膜にしたい金属を陽極(+)として電気を流します。すると、プラスの金属イオンが、マイナスの製品側に引き寄せられて付着し、金属皮膜を形成します。
電着塗装は、自動車のボディの下塗りに代表されるように、防錆塗装の手法として非常に優れています。
電気的な作用で塗料が付着するため、袋構造や入り組んだ形状の製品でも、内部まで塗料が回り込み、均一な厚さの塗膜を形成できるのが最大のメリットです。吹き付け塗装では塗料が届きにくい部分も、ムラなく防錆塗装できます。
製品に付着しなかった塗料は回収して再利用できるため、塗料の使用効率が95%以上と非常に高く、無駄がありません。また、水系の塗料が使われるため、火災の危険性が低く、人体や環境に有害な有機溶剤(VOC)の排出も少ない、環境に配慮した塗装方法です。
メッキは、塗装では得られない金属皮膜ならではの特性を付与します。
金属の皮膜であるため、塗装に比べて硬度、耐摩耗性、耐食性といった物理的な強度が格段に高いのが特徴です。また、電気を通しやすくする「導電性」や、熱を伝えやすくする「導熱性」など、金属の性質を活かした多様な機能を製品に与えることができます。
クロムや金、銀といった金属が持つ、独特の光沢や色彩、重厚感は、塗装では表現が難しい高いレベルの装飾性を製品にもたらします。製品の価値を大きく高める、高級感を演出するのに適しています。
電着塗装とメッキは、どちらも電気を利用する優れた表面処理ですが、その目的と得意分野は明確に異なります。
複雑な形状の製品に対して、コストを抑えつつ、隅々まで高い防錆性能を与えたい場合は「電着塗装」。一方、製品に防錆以上の耐久性や、導電性といった特殊な機能、あるいは金属の高級な質感を与えたい場合は「メッキ」が適しています。
両者の違いを正しく理解し、製品が求められる性能や役割に応じて適切に使い分けることが、ものづくりの品質を高める上で非常に重要です。
製品に関する専門知識や技術が不足すると、色ムラや塗装剥がれが発生し、品質低下やコスト増、納期遅れを招きます。
そういった事態を避けるために、製品に適した塗装技術と設備を持つ会社選びが重要です。
繊細なデザインと塗料の密着性が難しいチタン素材が特徴の鯖江眼鏡※1において実績がある。そこで培われた技術で複雑な形状の小物でも360度ムラ・異物混入なく仕上げる。
他社ではなかなか対応が難しい最大10mの塗装にも対応※2できる設備を備えているため、建材や施設のエントランス、大型家具などにも多彩なカラーや模様塗装が可能。
高膜厚粉体塗料を使用した塗装設備を保有しており、1回の塗装で一般的な塗装のおよそ4~5倍の厚さを形成できるため、キズや摩耗に負けない耐久性の高い塗装が得意。
※1鯖江眼鏡:眼鏡の一大生産地として知られる福井県・鯖江市でつくられる眼鏡。フレームの国内シェア95%以上を誇る
※2「焼付塗装 メーカー」「金属塗装 メーカー」と検索(chrome)し表示される18社すべてのうち唯一10mの製品に対応できる企業(2024年9月25日時点。編集チーム調べ)