美しい金属光沢を放ち、製品に新たな機能を与えるメッキ。その皮膜は、単にメッキ液に浸けるだけで完成するわけではありません。高品質なメッキ皮膜は、科学的な知見に基づいた、数多くの緻密な工程を経て初めて生み出されます。
この記事では、製品が工場に搬入されてから、美しいメッキ製品として出荷されるまでの、一般的なメッキの処理工程を順を追って分かりやすく解説します。各工程が、最終的な品質にどう影響するのかを見ていきましょう。
メッキの工程は、大きく分けて「前処理」「メッキ処理」「後処理」の3つのブロックに分けることができます。驚かれるかもしれませんが、この中で最も時間と手間がかけられ、品質への影響も大きいのが「前処理」です。
一般的な工程の流れは、「脱脂」→「水洗」→「酸洗」といった前処理から始まり、「メッキ処理」を経て、「後処理」「乾燥」「検査」へと進んでいきます。
前処理の目的は、製品の表面に付着している油分や汚れ、錆、酸化膜などを完全に取り除き、メッキがしっかりと密着するための清浄な表面(=活性な面)を作り出すことです。メッキ不良のほとんどは、この前処理の不備が原因と言われるほど重要な工程です。
まず、製品に付着しているプレス油や切削油、防錆油、人の皮脂などを取り除きます。アルカリ性の溶液に浸す「浸漬脱脂」や、電気を流して洗浄効果を高める「電解脱脂」など、素材や汚れの種類に応じて様々な方法が用いられます。
金属表面に生成した錆や、熱処理などで生じた酸化膜(スケール)を、酸性の溶液(塩酸や硫酸など)に浸して化学的に溶解除去します。これにより、メッキの密着を妨げる不純物を取り除き、金属本来のきれいな表面を露出させます。
各処理工程の間には、必ず「水洗」工程が入ります。前の工程で使用した薬液を、次の工程に持ち込まないようにするためです。この水洗が不十分だと、メッキ浴を汚染してしまい、メッキ不良の大きな原因となります。
前処理で完全にクリーンになった製品を、いよいよメッキ浴に浸して皮膜を形成させます。
目的の金属イオンを含んだメッキ浴に製品を浸し、電気を流します。この際、浴の温度、pH(酸性・アルカリ性の度合い)、電流の強さ、時間などを厳密に管理することで、狙い通りの厚さや光沢、硬さを持つメッキ皮膜を形成します。装飾クロムメッキのように、銅メッキ→ニッケルメッキ→クロムメッキと、複数のメッキを層状に重ねていくこともあります。
メッキ処理が終わった後も、製品の価値を高め、品質を保証するための重要な工程が続きます。
最終の水洗後、製品を乾燥させます。乾燥が不十分だと、シミや変色の原因となるため、温風乾燥炉などを用いて水分を完全に除去します。
銀メッキの変色防止や、亜鉛メッキの耐食性をさらに高めるために、クロメート処理などの化成処理を施す場合があります。最上層に、目には見えない透明な保護膜を作ることで、メッキ皮膜をさらに長持ちさせます。
最後に、完成した製品が要求仕様を満たしているかを厳しく検査します。膜厚計による厚さの測定や、外観のチェック、密着性試験などを行い、すべての基準をクリアしたものだけが、製品として出荷されます。
メッキ処理工程は、単に金属をコーティングするだけでなく、素材の表面状態を整え、化学的な反応を精密にコントロールし、最終的な品質を保証するという、一連の科学的なプロセスです。目に見えないレベルでの丁寧な下準備と、各工程での厳格な品質管理こそが、美しく、そして高機能なメッキ製品を生み出す鍵なのです。
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