工業塗装では、どれだけ高機能な塗料を使っていても、膜厚が適正な範囲に収まっていなければ、性能を十分に発揮できません。薄すぎれば耐食性や耐久性が不足し、厚すぎれば割れや剥がれ、外観不良の原因になります。さらに、不必要な厚膜は材料コストの無駄にも直結します。
そのため、量産品の品質管理では、塗装完了後に膜厚を測定し、仕様どおりの厚みになっているかを確認することが不可欠です。ここでは、工業塗装における膜厚測定の考え方と目的、代表的な測定方法についてわかりやすく解説します。
膜厚測定とは、塗装やメッキなどの表面処理で形成された皮膜が、図面や仕様書で定められた厚みになっているかを確認するための測定です。塗膜は数μm〜数十μmと非常に薄いため、目視では判別できません。専用の測定器を用いて、非破壊で厚みを確認することが一般的です。
工業塗装の現場では、製品の使用環境や求められる性能に応じて、「最低限必要な膜厚」と「それ以上厚くしてはいけない上限膜厚」が決められます。膜厚測定は、この範囲内に仕上がっているかどうかを確認するための重要な品質管理項目です。
膜厚測定の目的は、大きく分けると次の3点です。
防錆・絶縁・耐摩耗・意匠性など、塗膜に求められる性能は膜厚と密接に関係しています。膜厚が薄すぎると、設計上想定している耐食性や耐久性を満たせない可能性があり、クレームや早期不具合の原因になります。
必要以上に厚い塗膜は、塗料使用量や塗装時間の増加につながります。特に高機能塗料は単価も高いため、指定された膜厚範囲を守ることがコスト管理や資源の有効活用にも直結します。
精密部品や嵌合部では、過度な膜厚が寸法公差を外れさせることがあります。また、厚膜すぎると塗膜内部の応力が高まり、割れやちぢれ、オレンジピールなど外観不良の原因となることもあります。膜厚測定により、設計通りの寸法と外観を安定して維持することができます。

膜厚測定には複数の方法があり、下地金属の種類(磁性・非磁性)、塗膜の材質、想定される膜厚範囲によって適した測定器が異なります。ここでは代表的な測定方法を紹介します。
蛍光X線膜厚測定器は、主にメッキや多層皮膜の膜厚測定に使われる装置です。試料にX線を照射し、発生する蛍光X線の強度から膜厚を算出します。複数の金属層が重なった構造でも、各層ごとの膜厚を非破壊で測定できることが大きな特長です。
工業塗装の現場でも、金属上の機能メッキと塗装を組み合わせた製品や、高精度な膜厚管理が求められる部品で活用されています。
電磁膜厚計は、鉄や鋼などの磁性金属上に形成された非磁性の塗膜やメッキの膜厚を測定するための測定器です。プローブを塗膜表面に軽く当てるだけで、磁気の変化量から膜厚を算出できるため、量産ラインでの抜き取り測定に適しています。
自動車ボディの塗装や鋼板への塗装、磁性金属上の防錆塗装など、幅広い用途で使用されています。
渦電流膜厚計は、アルミやステンレスなどの非磁性金属上の絶縁塗膜の膜厚測定に適した測定器です。電磁膜厚計と同様に非破壊で測定でき、非鉄金属への塗装やアルマイト上の塗装などで多用されています。
電磁膜厚計とのデュアルタイプとして1台で両方の測定方式に対応できる機種もあり、工業塗装の現場でよく採用されています。
比較的厚い塗膜やライニングなどの場合、塗装前後の寸法差をマイクロメータやノギスで測定して膜厚を求める方法もあります。この方法は単純で分かりやすい一方、素材自体の寸法精度が高いことが前提となります。
また、局所的な厚みのばらつきや、下地の凹凸などの影響も受けやすいため、高精度な管理が必要な場合は、専用の膜厚計と併用されることが一般的です。
膜厚測定は、工業塗装における最も基本的で重要な品質管理項目のひとつです。塗膜が薄すぎれば性能不足、厚すぎれば不具合やコスト増につながるため、仕様で定められた範囲内に収まっているかを確認することが欠かせません。
蛍光X線膜厚測定器、電磁膜厚計、渦電流膜厚計、マイクロメータなど、製品や下地金属、目的に合わせて適切な測定方法を選ぶことで、塗装品質を安定して管理することができます。塗装会社に依頼する際は、どの測定方法に対応しているか、どの程度の膜厚管理精度を保証できるかを確認しておくと安心です。
自社製品に最適な膜厚や表面処理仕様がわからない場合は、工業塗装に精通した塗装会社に相談しながら決めていくことが重要です。用途別に選べる工業塗装会社おすすめ3社も、パートナー選定の参考としてぜひ活用してください。
製品に関する専門知識や技術が不足すると、色ムラや塗装剥がれが発生し、品質低下やコスト増、納期遅れを招きます。
そういった事態を避けるために、製品に適した塗装技術と設備を持つ会社選びが重要です。

繊細なデザインと塗料の密着性が難しいチタン素材が特徴の鯖江眼鏡※1において実績がある。そこで培われた技術で複雑な形状の小物でも360度ムラ・異物混入なく仕上げる。

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