工業塗装では、見た目の美しさだけでなく、日常使用でどれだけ傷が付きにくいかという点も重要な性能のひとつです。特に、頻繁に触れられる部品や、他部品との接触が多い部品では、塗膜表面の硬さが外観の維持や耐久性に直結します。この塗膜表面の硬さを簡便に確認する代表的な方法が「鉛筆硬度試験」です。
ここでは、旧JIS K5400から現行のJIS K5600へと受け継がれている鉛筆硬度試験について、その意味と目的、具体的な試験方法を分かりやすく解説します。
鉛筆硬度試験とは、塗装された試験片の表面を硬度の異なる鉛筆で引っかき、どの硬さの鉛筆まで塗膜が傷つかずに耐えられるかを確認する試験です。旧JIS K5400では「鉛筆引っかき値」として規定されていましたが、現在はJIS K5600の「引っかき硬度(鉛筆法)」として整理されています。
この試験で得られる「○H」「○B」といった鉛筆硬度は、塗膜表面の傷付きにくさを示すひとつの指標です。ただし、硬ければ硬いほど良いというわけではありません。硬度が高すぎる塗膜は、柔軟性が不足して割れやすくなることもあり、「硬さ」と「屈曲性」のバランスを見ながら評価することが重要です。
鉛筆硬度試験の主な目的は、塗膜表面の「硬さ」を簡易的に数値化し、規定された硬度を満たしているかを確認することです。特に次のような点の確認に役立ちます。
日常使用で想定される「こすれ」や「引っかき」に対して、塗膜がどれくらい耐えられるかを判断する目安として利用されます。家電、筐体、金属部品など、外観品質を重視する製品では重要な評価項目です。
焼付塗装の焼付温度や時間が不足していたり、2液型ウレタン塗装で硬化剤が不足していると、塗膜の硬度が十分に出ません。鉛筆硬度試験によって、塗膜が設計通りに硬化しているかどうかを確認できます。
硬度が高い塗膜は傷付きにくい一方で、屈曲性が低くなり、曲げ試験で割れが発生しやすくなります。鉛筆硬度試験の結果は、「硬さ」と「柔軟性」のバランスが適切かどうかを検討するための参考値としても活用されます。

鉛筆硬度試験は、規格で定められた硬度範囲の鉛筆を用い、一定の角度と力で塗膜表面を引っかきながら評価します。ここでは手かき法の一般的な流れを紹介します。
まず、6B〜9Hなど硬度の異なる鉛筆を用意します。芯先を研磨紙(#400程度)に対して直角に当て、芯先が平らで角が鋭くなるように整えます。これにより、毎回同じ条件で塗面を引っかけるようにします。
研いだ鉛筆の芯を塗膜表面に対しておよそ45°の角度で当て、芯が折れない程度の力で押し付けながら、試験者の前方へ約1cmの長さで引きます。引く速度は約1cm/sとし、できるだけ一定に保ちます。
1回引っかくごとに鉛筆の芯先を再度研ぎ直し、同じ硬度の鉛筆で5回試験を繰り返します。塗膜が破れる、または明確なきり傷が入った回数を確認します。
5回の試験のうち、塗膜の破れや深いきり傷が2回以上発生した鉛筆硬度の一段下の硬度を、その塗膜の鉛筆硬度として記録します。例えば、Hの鉛筆で2回以上傷が入り、Fでは傷が入らなかった場合、その塗膜の鉛筆硬度はFと判定します。
鉛筆硬度試験は、塗膜表面の硬さを簡便に評価できる、工業塗装における基本的な品質試験のひとつです。焼付塗装、樹脂塗装、電着塗装、セラミックコートなど、塗装仕様によって目標とする硬度は異なりますが、規定の鉛筆硬度を満たしているかどうかを確認することは、安定した品質を維持するうえで欠かせません。
一方で、鉛筆硬度試験は塗膜の性能を評価する指標の一部に過ぎず、硬度だけで塗装の優劣が決まるわけではありません。実際の製品設計では、屈曲性、密着性、耐摩耗性、耐食性など、他の試験結果とあわせて総合的に判断していくことが重要です。
自社に必要な塗装仕様や目標硬度が分からない場合は、鉛筆硬度試験を含む品質評価に対応した工業塗装会社おすすめ3社に相談しながら決めていくのがおすすめです。
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